コラム

1853年製のエラールピアノを弾いてきました。

7月初めに愛知県豊根村の茶臼岳スキー場に隣接している「れんと」というホールで、1853年製のエラールピアノを弾いてきました。

「れんと」にて、エラールピアノを弾いてきました。

オーナーの永谷さんからのお誘いで、ショパンも弾いていたフォルテピアノのエラールピアノを2時間ほど弾かせていただき、19世紀のピアノの響きに浸ってきました。

写真をご覧になるとわかる通り、現代のピアノとは弦の張り方や音の出し方の構造が違うものの、速くも弾けるし、和音の厚みなどは素晴らしいし、音のスッキリ感は少ないながらも柔らかな響きがあって、興味深い体験でした。

エラールピアノは、現代のピアノとは弦の張り方や音の出し方の構造が違うものの、速くも弾けるし、和音の厚みなどは素晴らしいし、音のスッキリ感は少ないながらも柔らかな響きがありました。

ショパンはプレイエルというピアノを愛用していたようですが、エラールも弾いていたそうです。
また、エラールピアノはエラールピアノは、ハイドン、ベートーヴェン、リスト、ラヴェルなどが所有していたそうです。

秋に演奏予定のショパンのプレリュードをどう作っていくか迷っていたところがあったのですが、今回の体験で、音の方向性が決まった感じです。

今後さらに詰めていきたいと思っています。

ショパンエチュード10-7 補足

5月29日の勉強会まで10日ほどとなりました。
前回、右手の上の声部を出して、と申し上げましたが、なかなかうまくいかない方が多いです。
それで、1つの練習方法として、右手の下の声部をスタッカートで弾き、上はつないで、としたところ、だいぶ改善されました。
下の声部は連打なので、そちらに重心があると、速く弾いた時に音が残って連打にならなかったり、下の声部の方が大きくなって、メロディーがわからなくなったりしてしまうのです。
スタッカートは軽く弾いてください。
その弾き方を手が習得したら、速くして、ディナーミクをしっかりつけましょう。
そうすると、上のメロディーがきれいにつながります!

ショパンエチュードop.10-8とop.10-7について

Op.10-8
この曲は右手が4オクターヴを軽やかに下降したり、上行したりしている中、左手がのびやかに軽快なメロディーを歌って始まります。
中間では両手で緊張感を高めていき、その後、透明感のある響きを作り出すフレーズが来て、最後は両手の力強いユニゾンで華やかに終わります。
このような曲の魅力を出すためには、ショパンの指定しているテンポを目指していくことがどうしても必要です。
そのためには、右手の拍の頭のアクセント記号を守り、他の音は少し軽めに、ごつごつしないでveloceで駆け抜けていくことを心掛けていくことが肝要です。
だから、親指の素早い動きと軽く弾くテクニック、さらに下降,上昇のディナーミクをうまくつけていく弾き方(手の甲の傾け方)の研究などをするよう促される曲だと思います。
とても基本的な、でも大事な力をつける曲です。
また、速いテンポに慣れて、そのテンポでも落ち着いた演奏ができることも、身につけたい大事な能力と思います。

Op.10-7
この曲の右手は2声で、上の声部はレガートでくっきりと、一方下の声部は連打しているので軽く弾いていくことが必須です。
そうすると、左手の音と響きあって、美しい響きの楽しい曲になります。
さらに強弱の記号どおりに弾くと、結果的にvivaceのテンポで弾くことを可能としてくれます。
この右手の2声の実現のために、上の声部を斜め打鍵でしっかり弾いて支えとすると、下の声部をうすく、軽く弾けると思います。
5の指の根元を高めにしようとすることも、この下の声部の2121の連打を成功させるコツです。
また、右手に夢中になって左手がお客様になると、つい、左がごつごつして、結果、右手もレガートにならなくなります。
左のレガートにも気をつけて、両手の縦のバランスを考えると、すっきりした楽しい曲になるのです。
また、右手の和音をうまく弾くためには、鍵盤の手前から奥までのどの場所に指を置くかがキーポイントとなり、それぞれの音の違う指の位置や形をつなげていくためには、どうしても指の柔軟性、敏捷性を開発していくことが必須だと言えます。

頑張りましょう!

2021年を振り返って

昨年はコロナ禍の5月に音楽之友社ホールで私のリサイタルを開いた後、6月に君津市民文化ホールでミューズの会のコンサートを公開の予定を変更して関係者だけで開きました。
その後、9月に千葉市美浜文化ホールで「弾きたい曲を弾く会」をやはり関係者だけで開きました。本当は千葉市周辺の先生たちだけで「ピアノ講師演奏会」を生徒さんたちを対象として開くつもりでしたが、コロナの影響で断念して自分たちの勉強会としてホールを利用したわけです。
結局、ミューズの会の昨年の企画は2回とも非公開になったわけですが、メンバーは折にふれ集まっていたので、コロナ禍の中でも生の音楽を味わい、共に楽しみ、元気に1年を乗り越えられました。

今年は6月18日に君津市民文化ホールで希望者全員が演奏するジョイントコンサートを企画しています、今のところ公開する予定で、約3時間のコンサートになると思います。多くのかたに聴いていただけたら、と思っております。数回のリハーサルを経て、演奏を磨いていきたいと思います。

私個人としては、1980年代のニューヨークスタインウェイでゴルトベルク変奏曲を弾くということに昨年下半期を使いました。いつも使っているハンブルク製のフルコンのスタインウェイとは全く音色が異なり、私にとってはかなり衝撃的な体験をしました。ゴルトベルク変奏曲のまとまった音源が出来上がりつつあるのですが、どうなるでしょうか。
楽器を持ち歩けないピアニストは、その時向き合うピアノや環境で演奏が変化します。本当に「一期一会」です。それだけ、刺激的なことをしていると言えるのでしょうが。

5月のリサイタルで弾いたシューベルトの即興曲(ベーゼンドルファーで演奏)とニューヨークスタインウェイで弾いたゴルトベルク変奏曲のアリアを少し試聴コーナーに載せますので、よろしかったらお聴きください。

ショパンエチュードop.25-1「エオリアンハープ」について

ショパンがこの曲を演奏するのを聴いたシューマンが次のように述べているそうです。

嵐によって一瞬にしてすべての音が軽やかに鳴るエオリアンハープを頭に思い浮かべるように。
またピアニストの手から、あらゆる種類の幻想的な音のアラベスクが入り交じって流れるように。
そして荘重な低音の響きと繊細なソプラノの音が同時に連なって聞こえてくるようにする。
そうすれば、全体からエオリアンハープの音色のイメージが浮かび上がってくるであろう。

(コルトー版「ショパンエチュード」より)

つまり、この曲は、ソプラノとバスの旋律が基盤となる響きを形成していて、その中に反進行でうねる2本の分散和音が柔らかく、軽やかに響き合っているのです。
1つ1つの音がすべて聞こえるけれども、粒だちしないでうねっている和音の上に、メロディーが聞こえ、時にテノールの歌も聞こえる、まさに妙なる調べの曲なのです。

そのため、指はできるだけ立てないで、鍵盤に置いた形で弾き、手の重みを加減することで、強弱の変化をつけていきましょう。
響きの増減が自在にできるようになると、その中から浮かび上がるメロディーも表情をつけてきます。

内側のうねりの美しい響きを成立させるには、音がずれないこと、バランスがとれていることが必須です。
また、浅く弾くだけでなく、指をはなす時の衝撃音も出さないように気をつけましょう。

そして、外側のメロディーは、スラーに留意して、音が飛ぶ時もぶつ切れにならないように、最短距離で、飛ぶ角度も考えて弾きましょう。音質も考えてください。

つい、フレーズごとに止まりそうになったりしますが、できるだけ、速度記号に従って流れるように弾き、盛り上がりが作れると、ため息が出るような美しい曲が生まれるでしょう!