コラム

2025年5月の♪ミューズの会ジョイントコンサート解説

今回のコンサートは「1880年以降の作品を集めて」という副題をつけました。
今年はたまたまラヴェル生誕150年、サティ没後100年にあたります。
今年は大阪万博が開かれていますが、1889年にはフランス革命から100年という記念で、エッフェル塔が建てられたパリ万博が開催されました。
そこでは日本庭園が造られたり、インドネシアのガムラン音楽が紹介されたり、東洋などさまざまな文化が紹介され、音楽の世界にも多大な影響を与えました。
今回演奏されるサティやドビュッシー、ラヴェルたちもそのような響きを取り入れたりしています。
パリ万博前から生まれてきていた新しい響きの音楽がますます花開いた感じでしょうか。
その動きに触発されて、1度は作曲の筆を折ったブラームスがまた作曲を再開して素晴らしい作品を生み出したことも特筆すべきことです。

そこで、今回の作曲家たちを生まれた順に並べると以下のようになります。

  • ブラームス1833~1897年
  • ドビュッシー1862~1918年
  • サティ1866~1925年
  • ラフマニノフ1873~1943年
  • ラヴェル1875~1937年
  • 中田喜直1923~2000年

それでは、作品の作曲年代を順に並べてみます。

  • 1890年サティ(グノシェンヌ、ジュ・トゥ・ヴー)ドビュッシー(夢、ロマンティックなワルツ、舞曲、ベルガマスク組曲)
  • 1892年ラフマニノフ(エレジー、プレリュードop.3-2「鐘」)ブラームス(間奏曲p.119-1,間奏曲p.117-1)
  • 1894年ラフマニノフ(ワルツ)
  • 1901年ラヴェル(水の戯れ)
  • 1902年サティ(大リトルネッロ)
  • 1903年ドビュッシー(塔)ラフマニノフ(プレリュードop.23-4&5)
  • 1905年ドビュッシー(ベルガマスク組曲改訂版)
  • 1908年ドビュッシー(ゴリウォーグのケーク・ウォーク)
  • 1910年ドビュッシー(前奏曲集第1巻)
  • 1913年ドビュッシー(前奏曲集第2巻)
  • 1914年ラヴェル(クープランの墓)
  • 1916年ラフマニノフ(音の絵第2集)
  • 1933年ラフマニノフ(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番より)
  • 1958年中田喜直(こどものための8つのうた)

この年表とプログラムの順番とは異なりますが、時代の流れを演奏から感じられると面白いですね。
勿論、フランス人のサティ、ドビュッシー、ラヴェル、ロシア人のラフマニノフ、ドイツ人のブラームスという国民性の違いを感じるのも面白いです。

1853年製のエラールピアノを弾いてきました。

7月初めに愛知県豊根村の茶臼岳スキー場に隣接している「れんと」というホールで、1853年製のエラールピアノを弾いてきました。

「れんと」にて、エラールピアノを弾いてきました。

オーナーの永谷さんからのお誘いで、ショパンも弾いていたフォルテピアノのエラールピアノを2時間ほど弾かせていただき、19世紀のピアノの響きに浸ってきました。

写真をご覧になるとわかる通り、現代のピアノとは弦の張り方や音の出し方の構造が違うものの、速くも弾けるし、和音の厚みなどは素晴らしいし、音のスッキリ感は少ないながらも柔らかな響きがあって、興味深い体験でした。

エラールピアノは、現代のピアノとは弦の張り方や音の出し方の構造が違うものの、速くも弾けるし、和音の厚みなどは素晴らしいし、音のスッキリ感は少ないながらも柔らかな響きがありました。

ショパンはプレイエルというピアノを愛用していたようですが、エラールも弾いていたそうです。
また、エラールピアノはエラールピアノは、ハイドン、ベートーヴェン、リスト、ラヴェルなどが所有していたそうです。

秋に演奏予定のショパンのプレリュードをどう作っていくか迷っていたところがあったのですが、今回の体験で、音の方向性が決まった感じです。

今後さらに詰めていきたいと思っています。

ショパンエチュード10-7 補足

5月29日の勉強会まで10日ほどとなりました。
前回、右手の上の声部を出して、と申し上げましたが、なかなかうまくいかない方が多いです。
それで、1つの練習方法として、右手の下の声部をスタッカートで弾き、上はつないで、としたところ、だいぶ改善されました。
下の声部は連打なので、そちらに重心があると、速く弾いた時に音が残って連打にならなかったり、下の声部の方が大きくなって、メロディーがわからなくなったりしてしまうのです。
スタッカートは軽く弾いてください。
その弾き方を手が習得したら、速くして、ディナーミクをしっかりつけましょう。
そうすると、上のメロディーがきれいにつながります!

ショパンエチュードop.10-8とop.10-7について

Op.10-8
この曲は右手が4オクターヴを軽やかに下降したり、上行したりしている中、左手がのびやかに軽快なメロディーを歌って始まります。
中間では両手で緊張感を高めていき、その後、透明感のある響きを作り出すフレーズが来て、最後は両手の力強いユニゾンで華やかに終わります。
このような曲の魅力を出すためには、ショパンの指定しているテンポを目指していくことがどうしても必要です。
そのためには、右手の拍の頭のアクセント記号を守り、他の音は少し軽めに、ごつごつしないでveloceで駆け抜けていくことを心掛けていくことが肝要です。
だから、親指の素早い動きと軽く弾くテクニック、さらに下降,上昇のディナーミクをうまくつけていく弾き方(手の甲の傾け方)の研究などをするよう促される曲だと思います。
とても基本的な、でも大事な力をつける曲です。
また、速いテンポに慣れて、そのテンポでも落ち着いた演奏ができることも、身につけたい大事な能力と思います。

Op.10-7
この曲の右手は2声で、上の声部はレガートでくっきりと、一方下の声部は連打しているので軽く弾いていくことが必須です。
そうすると、左手の音と響きあって、美しい響きの楽しい曲になります。
さらに強弱の記号どおりに弾くと、結果的にvivaceのテンポで弾くことを可能としてくれます。
この右手の2声の実現のために、上の声部を斜め打鍵でしっかり弾いて支えとすると、下の声部をうすく、軽く弾けると思います。
5の指の根元を高めにしようとすることも、この下の声部の2121の連打を成功させるコツです。
また、右手に夢中になって左手がお客様になると、つい、左がごつごつして、結果、右手もレガートにならなくなります。
左のレガートにも気をつけて、両手の縦のバランスを考えると、すっきりした楽しい曲になるのです。
また、右手の和音をうまく弾くためには、鍵盤の手前から奥までのどの場所に指を置くかがキーポイントとなり、それぞれの音の違う指の位置や形をつなげていくためには、どうしても指の柔軟性、敏捷性を開発していくことが必須だと言えます。

頑張りましょう!

2021年を振り返って

昨年はコロナ禍の5月に音楽之友社ホールで私のリサイタルを開いた後、6月に君津市民文化ホールでミューズの会のコンサートを公開の予定を変更して関係者だけで開きました。
その後、9月に千葉市美浜文化ホールで「弾きたい曲を弾く会」をやはり関係者だけで開きました。本当は千葉市周辺の先生たちだけで「ピアノ講師演奏会」を生徒さんたちを対象として開くつもりでしたが、コロナの影響で断念して自分たちの勉強会としてホールを利用したわけです。
結局、ミューズの会の昨年の企画は2回とも非公開になったわけですが、メンバーは折にふれ集まっていたので、コロナ禍の中でも生の音楽を味わい、共に楽しみ、元気に1年を乗り越えられました。

今年は6月18日に君津市民文化ホールで希望者全員が演奏するジョイントコンサートを企画しています、今のところ公開する予定で、約3時間のコンサートになると思います。多くのかたに聴いていただけたら、と思っております。数回のリハーサルを経て、演奏を磨いていきたいと思います。

私個人としては、1980年代のニューヨークスタインウェイでゴルトベルク変奏曲を弾くということに昨年下半期を使いました。いつも使っているハンブルク製のフルコンのスタインウェイとは全く音色が異なり、私にとってはかなり衝撃的な体験をしました。ゴルトベルク変奏曲のまとまった音源が出来上がりつつあるのですが、どうなるでしょうか。
楽器を持ち歩けないピアニストは、その時向き合うピアノや環境で演奏が変化します。本当に「一期一会」です。それだけ、刺激的なことをしていると言えるのでしょうが。

5月のリサイタルで弾いたシューベルトの即興曲(ベーゼンドルファーで演奏)とニューヨークスタインウェイで弾いたゴルトベルク変奏曲のアリアを少し試聴コーナーに載せますので、よろしかったらお聴きください。