5年以上も前に、ピアノの先生をされている♪ミューズの会の方たちから、子供たちが発表会で弾く曲目の選択枝を増やしたいと言われ て、勉強会は発足しました。最初は、ギロック、カバレフスキー、バルトーク、湯山昭、プロコフィエフらの子供用の作品を数ケ月に1回のペースで、皆で弾き あいしながら、音色や表現方法などを考えていきました。

そうしているうちに、ソナチネアルバムが先生方に軽視されていることに気づいて、ソナチネの数曲を全楽章取り上げることを私から提案し、それからバッハの小品やフランス組曲、モーツァルトのソナタ、ハイドンのソナタ、シューベルトのワルツなどを取り上げ、とうとうベートーヴェンにたどり着きました。

発表会を前にして、このようなことをする気になったのは、ベートーヴェンのソナタは音大の入試に必要で高校生の時、必死でさらったものの、入学してからはあまり取り上げられず、無理くり弾いていたその演奏スタイルをかなりの人が大人になってもずっと引きずっていることに気付いたからです。

素晴らしいピアニストでもあったベートーヴェンはオーケストラのような構成で作曲をしています。彼は「楽聖」といわれるだけあって、 その曲はめんめんと彼の気持ちや考えを語っていきます。悲嘆にくれたり、希望にもえたり、喜びがあったり、怒ったり、慰めがあったり、また、馬車の音、森 の雰囲気などの情景描写など、どの曲も本当に心の奥底にしみわたっていく感動があります。ところが楽譜を多声として読まず、硬い手で叩いたり、押したりす る方法で演奏することで、ベートーヴェンの美しさも躍動感も存在しなくなったりするのです。

今回、13人の方たちのベートーヴェンのレッスンを通して、いくつかの気をつけなくてはいけない共通点が浮かび上がりました。覚書の感じですが、書いていきたいと思います。読んでくださって、ご自分の演奏を見直すヒントになったら幸いです。

弾く姿勢について

ピアノにかじりつくような、また、のしかかるような姿勢ではなく、腰をしゃんとして、肩や手首の力を抜いて、指を鍵盤の底まで入れると、深い響きのある音が出てきます。また、小刻みに首などを振らないようにすると、曲の大きなまとまり(大段落)を感じられるようになります。その大段落がうまくつながってこそ、曲の道筋を聴き手に伝えることができるようになると思います。

また、手首や腕をかたくしないことも大事です。弱起の休符を手で感じるためにも、柔らかい手が必要です。

拍子を常に感じて

強・弱・中強・弱といった拍子感が体の中にあると、弱起やシンコペーションなどのリズムがいきてきます。その拍子感をしばしば分散和音の伴奏が作り出しています。ですから、左手でも右手でも分散和音を弾いている手が、拍子感を生み出すよう気をつけてほしいです。

和音の弾き方

和音は、柔軟でありながら、シャベルカーのように鍵盤をつまみあげるような指で弾くと、厚みのある音が出てきます。そのために、1の指は爪の角あたりで打つようにすると、うまく打鍵をコントロールできるようになります。

また、和音をかたまりとしてとらえず、オーケストラのように、いくつかの楽器の音が横に流れつつ、同時に縦に音が積みあがっていると考えると、和音のつなぎ方に敏感になります。1つ1つの和音がずれず、バランスがとれていることはもちろんですが、手首を上げて移動していると、音は切れてしまい、つなげるのはペダルまかせでは、レガートはうまくいきません。手首を下げて回しながら手を横に動かしていくように工夫し、指替えもうまく使って、和音をつなげてください。ピアノは音を出したら減衰するだけという弱点がありますが、響きのある音にしていくと、指としては本当はつながっていなくても、つながって聞こえます。その微妙な動きを研究すると、演奏がレベルアップすること間違いなしです。

指の動かし方

指をしっかり動かそうと思うあまり、バタバタと指を動かしてしまうことが多いですが、厚みのある音を並べたレガートにしようと思ったら、指は最少の動きで動かしましょう。 上げすぎないことが重要です。

楽譜の読み方

バッハ同様、多声の楽譜として読む必要があります。もちろん、音価を正しく、強弱記号を守る、など、常に楽譜を見直す姿勢もほしいです。(自戒を含めて。弾き慣れて、違うことをしていることは多々あります。)

気持ちをしっかり

ベートーヴェンの曲を弾く時は速くても遅くても、気持ちをしっかり持って、前向きに。すると、ベートーヴェンの精神があふれ出てきますよ。体力、そして、気力が必要です。ただ、気力を高く持てるためには、自分の技術に対する信頼が必要なので、結局、練習をする、ということに尽きるのですが。