ショパンがこの曲を演奏するのを聴いたシューマンが次のように述べているそうです。
嵐によって一瞬にしてすべての音が軽やかに鳴るエオリアンハープを頭に思い浮かべるように。
またピアニストの手から、あらゆる種類の幻想的な音のアラベスクが入り交じって流れるように。
そして荘重な低音の響きと繊細なソプラノの音が同時に連なって聞こえてくるようにする。
そうすれば、全体からエオリアンハープの音色のイメージが浮かび上がってくるであろう。
(コルトー版「ショパンエチュード」より)
つまり、この曲は、ソプラノとバスの旋律が基盤となる響きを形成していて、その中に反進行でうねる2本の分散和音が柔らかく、軽やかに響き合っているのです。
1つ1つの音がすべて聞こえるけれども、粒だちしないでうねっている和音の上に、メロディーが聞こえ、時にテノールの歌も聞こえる、まさに妙なる調べの曲なのです。
そのため、指はできるだけ立てないで、鍵盤に置いた形で弾き、手の重みを加減することで、強弱の変化をつけていきましょう。
響きの増減が自在にできるようになると、その中から浮かび上がるメロディーも表情をつけてきます。
内側のうねりの美しい響きを成立させるには、音がずれないこと、バランスがとれていることが必須です。
また、浅く弾くだけでなく、指をはなす時の衝撃音も出さないように気をつけましょう。
そして、外側のメロディーは、スラーに留意して、音が飛ぶ時もぶつ切れにならないように、最短距離で、飛ぶ角度も考えて弾きましょう。音質も考えてください。
つい、フレーズごとに止まりそうになったりしますが、できるだけ、速度記号に従って流れるように弾き、盛り上がりが作れると、ため息が出るような美しい曲が生まれるでしょう!